丹羽くんの東京五輪が終わった
- Ctree
- 2021年8月11日
- 読了時間: 6分
先週の金曜日まで、確かに彼らは戦っていた。
いま、東京五輪が終わって、まつりのあとのような気持ちだ。
コロナ中心の内容にテレビは切り替わり、日常(というにはあまりに悲しい)が戻ってきつつある。
ここ数日、水谷さんを中心に選手たちは番組に呼ばれて、楽しいインタビューを見せてくれる。
でも、もうあのチームは終わってしまったのだ、奇跡的に集まった3人の天才のあのチームは、二度と見ることができないのだとわかると、途方にくれる。

21歳で出場したリオ五輪の直後から、ストイックに東京五輪を目指してきた、26歳の丹羽くんの、1年遅れの東京五輪が終わった。
シングルスベスト16、団体銅メダル
シングルスは本意ではなかっただろうけど、団体はほんとに頑張ったと思う。
五輪前、最後の国際大会である3月のカタールでは、ツボイ(ブラジル)のボールをコートの中におさめられず、6月アジア選手権選考会で予選落ち、調子が悪そうだった。
7月のドリームマッチはコロナワクチンの副反応で出れず、丹羽くんの調整は大丈夫だろうかと心配した。
でも、大会が始まるとそれが杞憂だったと分かる。
東京体育館での練習の表情が、ここ数年でダントツに輝いていた。
やっぱ丹羽くんはあの赤い仕様の五輪会場に燃えるんだね。
シングルスの初戦、苦手なカットマンに4-0ストレートで勝利。
誰もが初戦固くなるのに、丹羽くんはいつものように淡々と、かつ集中を切らさず戦っていた。
それをどんなに多くの選手ができないことなのか、この五輪で改めて知る。
そしてシングルス2戦目。
いいドローにはいったなと思ったけど、それは全く間違っていた。
過去に勝利したことがあるとはいえ、銅メダルに輝いたオフチャロフは、リオ五輪からの5年間の中で最強の状態。
丹羽くんは以前よりも打球点が遅くなって、2017年のようにはオフチャロフと闘えなかったとインタビューで言っている。
それは、見てわかっていたけど、あんなに若かった丹羽くんも、そういう年齢になってきたのだと悲しくなった。(それでも充分速いけど)
けど、調子自体は悪くないから、団体戦は頑張ってくれるだろうなと思った。
むしろハリーのシングルスがホントに心配だった。
林兆恒戦、あきらかにおかしかったし、自信もなさそうだった。
どスランプが五輪にぶつかってしまった。
だから6月のアジア選手権選考会にも出れなかったのかなと感じた。
団体戦初戦、オーストラリア戦も、ハリーには心配が残った。
丹羽くんと水谷さんの左左ペアは、初勝利をあげた。
相手は実力差があったけど、勝ったという事実は自信になる。
準々決勝スウェーデン戦、丹羽くんとハリーのペアがダブルスをとった。
この試合で、2人がイキイキしていて、あ、これはハリー、いい感じになってきたと思った。これは3-0で日本いけるんじゃないか。
テンション高いハリーとクールな丹羽くんの温度差が話題になっていたけど、あまりにそれに慣れてしまって、むしろ今までの丹羽くんに比べてMAXガッツポーズが出ていて、丹羽くんテンション高いじゃんと感じた私の目は、すでに客観視ができていないと悟る(笑)
でも、2番、エース使いの水谷さんがファルクに完敗した。
ショックだった。水谷さん、ファルク苦手だったっけ???
ヨーロッパリーグやT2でファルクに負けてる印象がなかったので、どうしたのだろうと。
昨日まで調子が良かったけど、混合にピークを合わせて、それを2週間維持するのも難しいのか。
ボールが合ってない感じがした。あの天才的なタッチの水谷さんが、久々に対戦するフォア表のファルクのボールはコントロールできなかったのだろうか。
でも、のちの引退宣言を考えると、ボールがよく見えていない目だからこそ、ファルクの球質は余計に難しかったのかもしれない。
ダブルスで覚醒したハリーは、3番のシングルスで、スウェーデンの中でハリーが一番苦手なタイプとあたった。
今、ケルべリって呼ばれてるんだっけ?カールバーグ、シェルベリ??ブンデスリーグで無双している。若くて勢いがあって、同じスウェーデンのモーレゴード、韓国の安宰賢や趙大成と当たるような怖さだ。
ここで見事勝ってくれて、ハリーの完全復活を見る。
そんで、ここからが丹羽くんの大勝負だった。
ファルク。世界ランキング8位、現時点での世界選手権シルバーメダリスト。
2019年は1勝1敗。
でも丹羽くんはストレートで勝った。
それもゾッとするような勝ち方だった。
第2ゲーム、ファルクは丹羽くんへのボール、フォアストレートを4連続アウトした。
なんの変哲もないふわんとしたボールを。
これは、ほんとに相手の心を折る。
もう一生はいらないんじゃないか、イップスになってるんじゃないかっていう恐怖。
ああ、これが丹羽くんの卓球だと思った。
無表情で淡々と相手の心を折っていく。
ヨーロッパの選手はのせるととんでもないけど、落ち込ませるとそこから沈んでいく選手は多く、ファルクがあとは自滅していった感じだった。
こんな勝ち方ができる日本選手が、他にいるだろうか。
スウェーデン戦での丹羽くんの大活躍。
それがなかったら、日本は2018年の世界卓球のように、ベスト8で終わってたかもしれない。
ベスト8に出そろった国を見たらわかる。
中国がダントツに抜けているけど、それ以外は、相性や当日のコンディションで、どう転ぶか全くわからない。
そこが女子卓球界の縮図と、戦国時代に入ってる男子卓球界の縮図とで、圧倒的に違うところで、マスコミが報じない部分だ。
リオ五輪の銀メダル以降、メディアは、日本の敵はあとは中国だけだ、日本は2位という位置までは得ているんだって言う、罪な幻想を植え付けた。
この銅メダルがどんなにすごいことなのか、選手達本人が一番よくわかっているだろう。
水谷さんや丹羽くんが、メダルをとれてよかった、と心から言っているのを見ると、やっぱりそうだよねって理解できる。
ドイツ戦の死闘、3位決定戦の韓国戦、そして、水谷隼のことは、
長くなるので、またいつか書きたい。

丹羽くんのこれからのことはわからない。
まずは9月のTリーグ、そして11月ヒューストンでの世界選手権を頑張るといっている。
それでいいと思う。
目の前の試合、次の試合に集中して、
その先のことは、ゆっくり、ゆっくり考えていってくれたら。。
丹羽くん、お疲れさまでした。
リオ五輪からの5年間、戦いをずっと見てきて、この東京五輪で、素晴らしいチームワークとメダルを私たちに見せてくれて、ほんとうにありがとう。
東京五輪であらたなファンも獲得した、苫小牧出身のこのカワイイお兄ちゃんは
あまりに苦しすぎたこの東京五輪までの道のりを、笑顔に変えて、また静かに始動する。
私も
もう先のことは考えず、丹羽くんの次の試合、またその次の試合を、
楽しみにしているね。
※
あ、Youtubeで以前編集した「くすっと笑える集」「Road To Tokyo」、五輪が始まってから、再生回数が30万回ほど増えました。
テレ東さんのスーパープレー集やTikTokがバズったのは知っていたけど、
細々やってた私のところにも飛び火したりしてびっくりしました。
今までのかたや新しいかたも見てくださったようで、ホントにありがとうございました<(_ _)>
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